③ブバリアさんの☆☆を取り戻すマジカルダイアログ
ドアを開けると入って来たのは、身のこなしも軽やかな笑顔の可愛い20代前半の女性だった。
こちらの目を真っ直ぐに見て話す、そんなしっかりとした彼女にどんな問題があるのだろう?
そんなことを思わせられるような第一印象だった。
~今日のお客様~
・シャイニングネーム 『ブバリア』 さん
・年齢24歳 ・女性 ・未婚 ・ピアノ講師
「私、最近何だか疲れやすくなったような気がして…」 ブバリアさんは唐突に話し始めた。
「私、今まで1度も人のいる所では座ったことがない気がして… あ、心の中でですけど」
そう言うと、恥ずかしそうにうつむいた。
「誰の前でもブバリアさんは心を許して安心して寛いだことがないってこと?」
彼女を見つめゆずがそう言うと、軽くうなずいて彼女は続けた。
「だって、もし私がちょっと気をゆるめちゃって、
そのために誰かを知らずに傷つけてしまったら、そう考えると怖いんです」
「ああ、だからいつも自分を見張っているために立っているんだ」
「はい。そんなことになったら私… 自分を許せないと思う…」
ブバリアさんは自分に言い聞かせるように小さな声でつぶやいた。
「傷つけないためには今のまま頑張って行くべきだけど、でも心は疲れて来ちゃった… 辛いでしょうね」
横であずが労わるような表情で語りかけた。
「はい… でも自分じゃどうしてよいか分からなくて…」
「私、何だかブバリアさんってご自分に厳し過ぎるように感じるんだけど?」
そう言ってゆずがあずの方を向くと、あずもうなずきながら彼女を見ている。
「でも、見張っていないと私ってダメなんです!」彼女の表情がスッと強張った。
「あとはどんな戒律をご自分に課してるの?」
茶目っ気タップリにゆずが彼女に問いかけると、彼女も笑いながら、
「え~と、人の気持ちを分かってあげる?人を批判するときは自分はどうなのかを良く考えて、それから・・・」
出て来る出て来る・・・ 正直、私たちも驚きながら彼女の話を聞いていた。
~ゆず&あずテレパシートーク(心の中での会話)~
ゆず「何だか修行僧みたいね」
あず「ホントね。辛いだろうなブバリアさん…」
ゆず「そうよね!でも彼女って心底いい人なのね。人をあんなに大切に思う人っていないもの」
あず「でも、そんな心根の美しさに本人が気づいていないってところがねぇ」
ゆず「それどころか、まだ足りない!ってオモリを増そうとしてる(笑)(笑)」
あず「まずは、SOSを訴えて来てる心の中のブバリアさんを解放するところからかしらね」
ゆず「そうしたら変わるわよぉブバリアさん!」
あず「人だけじゃなく、自分にも優しい素敵なブバリアさんを取り戻したいものね!」
※ ・・・ ※ ・・・ ※ ・・・ ※
ゆずが言った。
「ねぇ、あなたはいつも人を大切にって思ってるでしょ?
じゃぁ、同じぐらいブバリアさんご自身のことを大切に思って接してくれている人はいるの?」
「え?」彼女は呆気にとられたような顔でゆずを見た。
私たちが尚も黙っていると、
「・・・私・・・考えたことがありませんでした」微かに聞き取れるぐらいの声だった。
「もし誰もいないとしたら…それって不公平じゃない?」
「不公平… あぁ、そう言えば私…可哀そうかなぁ」
すかさず、あずが続ける。
「そう…それが疲れちゃった原因かも知れないわね」
「・・・でも私、どうしたら? 気を抜いたら人を傷つけちゃうし、それは嫌なんです!」
またブバリアさんの表情が固くなる。
人を傷つけたくない・・・彼女にとって本当に大切なことなのだろう。
「ううん、どちらも不公平にならない良い方法があるのよ。それはね、あなたがあなたの味方になってあげるの」
「私がわたしの味方??」彼女は言っている意味が分からないという顔をした。
「そう」あずは頷いて彼女に笑いかけると優しく説明し始めた。
「誰でも私たちの中には、もう一人のわたしが住んでいるの。
頑張れ!まだ足りない!と言い続けていると、『もう一人のわたし』が傷ついて疲れて来ちゃうの。
ブバリアさんだって、誰かにそんなことをずっと言われ続けたらどう?」
「・・・苦しくなっちゃうと思います」
「そうよね。ましてやダメ出しをしているのは自分だから24時間逃げることも出来ない…でしょ?」
「はい」
「だから、そんな辛いあなたを分かってあげてほしいの。
ブバリアさんは相手の人を大切にしたいから、気を抜くことも自分に許さないんでしょう?
だったらせめて、そんなに頑張っているあなたを分かってあげない?認めてあげましょうよ」
「・・・」 驚いたような顔をしてブバリアさんは黙ってあずを見ている。
ゆずはそんなブバリアさんに優しくうなずくとあずに加わり一緒に話し続けた。
「もう一人のブバリアさんが陰で独りで努力をしているのに誰にも分かって貰えない、
誰からも認めて貰えていない、それこそが1番の疲れた原因なんじゃないかしら?」
彼女は黙って静かにうなずいた。
「だからね、そんなときは『あなたは頑張っているよね!私は知ってるよ』っていってあげて欲しいの。
『疲れたら私の前では愚痴を言ってもいいのよ。座ってもいいんだからね』って」
「愚痴?座っていい?」と不思議そうな顔をしてブバリアさんがゆずに聞いた。
「そう。だってあなただけの所でなら愚痴を言ったって椅子に座ったって構わない訳でしょ?」
「例えば、人の前では今迄通りに頑張る。その代り、一人になったら『よく頑張ったわね。あなた偉かったわよ!あなたスゴイわぁ、さすがよ!』こんな感じかしら」
「あ、なるほど。一人のときになら… でもそんなこと、私言えるかなぁ…」
「じゃ今言ってみて?『あなたいつも頑張ってるね』って」
「…あなた、いつも頑張ってるよね…」
私たちは続けた。
「私は分かってるよ」って。
「…私は分かってるからね」
「私はあなたの味方だよ」って。
「・・・」 ブバリアさんの目から涙が溢れ、両手で顔を覆ってしまった。
しばらくして私たちは静かに沈黙をやぶった。
「今はどんな気持ちですか?」
「こんな気持ち初めてなんですけど…私の中…喜んでます」
「よかったわぁ」私たちは思わず顔を見合わせた。
そのとき急に、ゆずはシャイニングネームの『ブバリア』の意味が分かった気がした。
「ブバリアって花の名前でしょ?珍しい花を知っているのね?」
「はい。いつだったかその花を見た途端、あまりに可愛らしくて一目惚れしちゃったんです」
「私も前に結婚式のブーケに使われていたブバリアの花を見たことがあるの。
十字架上に広がる4枚の花びら。真っ白で小さくて可憐な花よね。南国の甘い香りがしたわ」
「そうなんです!」彼女は初めて幸せそうな笑顔を見せた。
「でもブバリアって鮮度が長く持たないんじゃなかった?あんなに白くて可愛い花びらなのに、
結構すぐに茶色く変色しちゃうのよね?」
「そうなんです」残念そうな表情でブバリアさんはうなずいた。
「私ね、本当のあなたももしかしたら同じなんじゃないかなって思ったの。
外から見ると、しっかりしてて凛々しくて…でも中身はブバリアと一緒で、どこまでも清く…
でも、放っておくとすぐに変色してしまうような繊細さを併せ持つ人…」
「そうかも知れません。私ブバリアの清らかさや繊細さに魅せられて…
でも、私も同じに扱われたかったんですね、きっと」
彼女はそう言うと、吹っ切れたように明るく笑った。
ブバリアさんが帰った後も、私たちはしばらく彼女のことを考えていた。
慌てなくても、彼女が自分の味方になってさえいれば、
いつの日か人前でも座って寛げる日が来ることを信じながら・・・
この物語はフィクションであり、登場人物も含め、全て実在するものではありません。










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